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 苦境からの脱出方法は世界共通?
1.1980年代、アメリカと日本は逆方向を向いていた!
 

バブル絶頂期を迎える直前、地域の有力企業となったR社のD社長がこうおっしゃられたそうです。
『君たちは数値ばかりを並べて、コンサルティングです、と言う。しかし、そんなことをしても意思決定はできないし、儲けることもできない。経営は数値遊びではないんだよ!』というものです。

 当時はD社長ばかりではなく、多くの経営者の方が、同じような感触を持っていたのではないでしょうか。一方アメリカは逆でした。経営者を養成するビジネススクール(大学院)では、しばしば教授が将来のエリート候補生に「アイ・ニード・ナンバーズ(数値で話せ!) 」と怒鳴っていたのです。

 

2.“文化”の差ではない!
 

日米の文化の差を問題にしたいのではありません。もちろん文化の差はあるでしょうが、それ以上に特徴的な事柄が当時両国にあったように思うのです。

 つまり、日本は“ジャパン・アズ・ナンバー・ワン”として飛ぶ鳥を落とす勢いでしたし、アメリカは停滞した自国経済を復興させるために“バイ・アメリカ”として、輸入品ではなくアメリカ製品を買おうという運動を起こしているような、惨めな状況だったのです。

 

3.不振の時から救い出してくれるのは…
   勢いに乗った時には、数値やデータは確かに必要ないかも知れません。やることなすことうまく行くわけですから、考えるのも不要な時さえあるでしょう。しかし、そうした体質を苦境の際にまで引きずったら、やることなすことうまく行かないのは当然なのです。

 アメリカ経済が“数値”で生き返る前の1970年代には、その後世界一になった日本製造業界が『徹底した“データ=数値”分析』で品質向上に努めていました。苦しさからの回帰には、やはり例外はなく数値やデータが極めて重要なのではないでしょうか?。
 “数値”で経営するって?
1.K社長の苦悩
   また、輸入雑貨の仕入れから小売まで取り組んでおられたK社長は、採算悪化から、ビジネスの縮小や撤退を考えておられました。その際、こんな悩みが起きたと言うのです。

『一応毎年確かに利益計算をしていたが、それは何もかも全部ゴッチャにしたどんぶり勘定でしかなかった。どんな商品を仕入れた時に利益があったのか、どんな売り方が成功したのか、誰に売るのが最もコストが少なく利益が大きかったのか、そんな重要なデータが何一つ残っていない!』

と言うのです。

 

2.商売は売り上げだけではない!
   商売はいくらの売り上げを確保したかだけでは把握できません。その商品やサービスを売るのに、いくらコストをかけたかも、同じくらい問題です。それはもちろん、1万円の商品を売るのに、5千円しか使わなければ利益になりますが、1万2千円使えば損が出てしまうからです。
 企業の中には、様々なビジネスや活動が混在しているのが普通ですから、適正な視点からその一つ一つの“活動”を丁寧に見て行けば、利益のある “活動”とそうでない“活動”の区別や違いが見えて来る はずですし、また、見えて来なければならないのです。

3.営業や仕入れ、あるいは生産の“方法”も同じ
 

商品やサービスのみならず、その営業や仕入れのしかた、あるいは生産の方法などにも、効率がよいものも悪いものもあり、本来なら、それぞれの手法の成果が把握できて最適の方法を選べるようになっていなければなりません。要するに、数値で経営するというのは、何がよくて何が悪いかを計算できる手法を見つけることから始まるのです。しかし、先を急ぐ前に、1980年代にアメリカで『数値』を大切にした経営者の事情について、少し考えてみることにしましょう。

 正しい意思決定の底に流れるもの
1.経営マインドが変わるタイミング
   アメリカも1960年代は豊かでした。経済が自動的に成長するわけですから、難しいことを考えなくても、成長市場へ誰よりも早く乗り込めば成功の可能性が高かったのです。往々にして機敏な行動力は緻密な計算からは生まれません。冒頭のD社長のように、当時のアメリカでも“経営は計算ではなく直感だ!”と言い切る経営者に有利だったでしょう。
 ところが、ベトナム戦争の敗北やオイルショックで経済が疲弊し、国際競争力を失って、成長分野が見えにくくなった後は、直感型の経営者が次々に没落し、緻密な計算で経営判断をするタイプの経営者が台頭して来たわけです。

2.日本も同じ!
   日本も今、1980年代のアメリカと同じような状況にあります。簡単に言えば、時代が180度変わり、従来の経営直感が通用しなくなったのです。従いまして、漠然と方針を考えているだけでは答は出ないでしょう。

まずは、社内で、

何(誰)が儲かり何(誰)が損を出しているか
どんな方法で営業した時にどんな利益が生まれたか
どの顧客で利益が上がり、どの顧客で損が出ているか
どのビジネスのどんな方法に将来性があるか
従業員の賃金のどの部分を業績に連動させるべきか

などを、概算数値ででもよいから把握することが急務なのです。

 意味のある“計算”こそが、現在の窮地において経営指針を提供してくれる、ほとんど唯一の方法でしょう。そしてアメリカ経済が緻密な計算で生き返ったように、緻密な計算で苦境を乗り切れば、再び“経営感覚”を発揮できる時代もやって来るはずです。歴史は繰り返すでしょう。

 数値で意思決定するのは大変なのでは…?
1.実は日本にもあった失敗例!
   数値による意思決定システムは、実は1980年代日本の大企業でも流行していました。当時は数億円もするコンピュータを買い、多大なコストと陣容を投入して、企業は最適経営をはじき出す仕組み作りに没頭したケースさえあったのです。中には、石油製油所の最適原油選択システムなど、優れたものもありましたが、ほとんどは、がんばった割には効果が少なく、その効果も環境のちょっとした変化で吹き飛んでしまうのが実情でした。

2.“制度”ではなく“意識”の問題
   数値で経営しようと提言すると、多くの人がコンピュータシステムや戦略立案機関の設置のような制度を考えがちですが、システムや制度は、経営を硬直させるだけで、期待するほどの成果が生まれるわけではありません。必要なのは制度ではなく意識なのです。

3.どんな“ナンバー”が必要か?
   “アイ・ニード・ナンバーズ”と叫んだアメリカの教授も、詳細なシミュレーションを行えと言ったのではなく、

それを売る数量目標は?
標準価格は?、ディスカウント額は?
どの程度売れれば追加発注するか、いつストップするか
それがうまく行ったらいくらの利益が見込めるのか


などを“感覚”で言わず“数値”で話せ、と言っていたのです。数値で話すようになれば、最低限でも、
自分のプランの無理やムダ、あるいは間違いに自然に気付いて来るものだからでしょう。

 従いまして、まずは、それがどんなに不完全でも、“数値”で考え、“数値”を残そうとする意識が組織に生まれなければなりません。そうした意識的活動が蓄積されて行けば、より高度な“数値経営”も段階的に実現されるベースが出来上がるでしょう。
 “元気”な経営に立ち返るために!
1.計算をする意味を問い直そう!
   厳しい状況からの脱却には時間と忍耐が必要です。成長の波に乗るのではなく、むしろ、従来の流れに逆らわなければならないからです。流れが逆流であればあるほど、一気に問題を解決する“魔法”は少なくなり、コツコツ解決を見出す努力が求められるようになります。

 そしてその継続的な努力は、正しいデータや数値で行動をチェックしながら粘り強く継続する必要があるのです。やみくもにがんばったり、あせったりするのではなく、まずは正確な状況判断の基礎形成が求められるわけです。もちろん、正確に状況をつかむ努力を始めるのに、遅すぎるということはありません。

2.第一歩は“目的”の明確化から
   ただ、数値を意思決定に使う第一歩は、制度ではなく意識だと申し上げました。意識がない制度がはじき出す数値は信用できないばかりか、意識的な活動を伴わない制度は長続きしないからです。理想的には意識的な活動を積み上げ、それが自然に数値形成につながるようになるという展開でしょう。
 そして、その展開を始める最も適切な方法が、考えたことや予定を数値で表してみることなのです。

3.漫然とした経営の排除
 

様々な活動を数値で明示するようになると、お金の使い方やビジネス活動の“質”が徐々に変わって行くのを感じとることができます。もちろん、やり方のうまい下手はあるでしょうが、漫然と行動している状況に比べれば、どんな方法でも目に見える効果を生み出し始めるのです。

 そうした行動が蓄積されれば、その行動の集計が意味のある“経営分析”につながり、今度はそうした分析を基礎に意思決定ができるようになるはずです。要するに、蓄積なしに成果だけを得ようとするから、うまく行かないだけなのです。

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