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 “成果”があっても“利益”が出ない!
1.酒販店A社の嘆き
 酒類を宅配で販売しているA社では、このところ忙しい日々が続いています。近所にポスティングしている“ちらし”の効果がようやく出始め、注文が増えてきたからです。
 思い切って安くした価格設定も、注文即日配達というサービス強化も、ユーザーにアピールできたのでしょう。今後が大いに期待される…、はずでした。
 ところが、それは必ずしも好ましい結果にはつながらなかったのです。第一“利益”が出ません。

2.利益が出ない原因
   即日配送をうたったからでしょうか。おしなべて注文量は小口でした。しかも即日配送に徹しようと、配達現場では注文を受けるとすぐに配送してしまう傾向があります。ほんの少しの商品で、人とトラックが長時間“占有”されるのです。
 その上注文がない時には、現場には何も仕事がなくなりますので、小さな注文にもつい飛びついてしまい、効率を考えて配送しろという指示がなかなか徹底されません。
 配送コストだけではなく、在庫も問題でした。当初は、新しい酒を仕入れたら、仕入れた酒に限って“ちらし”でポスティングするという戦略をとっていたため、原則として在庫を長期に持つことは少ないと予測していました。
 ところが、リピーターは“ちらし”商品とともに、自分が好きなものを再注文する傾向があり、それに応えるために、必然的に在庫が積み上がって行ったのです。この在庫は資金繰りも大きく圧迫して行きました。

3.がんばるだけでは利益は出ない
   ただがんばるだけでは、A社のように売上拡大“成果”は出ても、なかなか“利益”が生まれないのです。特に、周辺人口が減少に向かい、逆に同業者は一向に減らないために競争が激化している地域では、利益は特別な努力なしには確保できない時代になってきていると考えた方がよいのです。
 儲からないことはやらない“勇気”、ん?
1.原価が想像以上に高かった!
 価格競争の激化で、私たちの周囲には、安くなければ売れない傾向が定着してしまいました。そして、この傾向はもっともっと安くしなければ売れないという疑心暗鬼の中で、更に悪循環を繰り返して来たかも知れません。
 しかしその結果が“労多くしてまた損失多し”だと意味がないでしょう。儲からない商談には断る勇気も必要なのです。

2.分かっていても“資金”が必要だから…
   『そんなことは分かっているが…』と話し始めた、旅行代理店B社の社長の話は印象的でした。それは、分かってはいるが、日銭稼ぎも私たちには重要だ。だからついつい安過ぎると思っても、大きな割引をしてしまう!という言葉です。
 3万円で仕入れた海外旅行商品が売れなければ3万円の損失ですが、2万5千円にしてでも売れば損失は5千円に減る、というのは確かに道理でしょう。しかし、ここにも深刻な落とし穴があると言わざるを得ません。気付いてみれば何でもないことなのですが…。

3.損が確定してしまう!
   2万5千円で売って少しでも資金が回収できれば、経営状態は改善するように感じがちですが、その一方で、5千円の損失は確定してしまうわけですから、そんな商談を積み重ねて行けば、資金繰りは急速に苦しくなります。目先の資金を回すために目をつむった“損”は、将来、より大きな資金不足を生み出すからです。
 売れない中で損をしないためには、一見結果論に聞こえるかも知れませんが、3万円という魅力的な商品でも、売れる見通しがなければ“仕入れない”

という、強い意思が必要なのです。“する”勇気ではなく“しない”勇気が、厳しい時代には不足しがちだからです。
 冒険ができるほど市場は成長していません。市場が成熟するなら、経営手法自体も成熟させなければならないでしょう。
 経営“勘”をどのように養うか
1.儲けるための特効薬は確かにないが…
 では儲からない商談をやめるため、あるいは儲かる業務に更にパワーを集中するために、何をすればよいのでしょうか。 
確かに儲かるための特効薬はないのでしょうが、利益を出している企業が共通して行っていることがあります。それが、シミュレーションの活用です。シミュレーションとは、いくら売れたらいくら儲かるかという計算を、条件を幾通りにも変えながら行って、好ましい決断や行動を模索する方法のことです。

2.シミュレーションは机上の計算に過ぎないが…
   もちろん、シミュレーションは単なる計算に過ぎませんが、条件を変えながら何度も計算していると、徐々に現実的なイメージが明確になってくるところがあり、想像以上に頼りになることが多いのです。
 旅行代理店のB社でも、3万円の海外旅行がせいぜい3万8千円でしか売れないとして、割り当ての30本を仕入れるかどうか考えると、

好ましい価格で完売しても利益は 24万円
ちらし印刷などのコストアップ 12万円
その他の経費上昇 5万円
差し引き粗利 7万円

となり、その間に販売に従事する従業員の人件費を考えれば、こんなものを売っていてはいけない!という結論を、ごく自然に得ることができたはずです。数値は非常に“雄弁”なのです。

3.シミュレーションを繰り返すことが“経営勘”を形成
   上記のような簡単な計算でも、漠然と考えている時よりは判断の基準が明確になることが分かります。漠然と考えていたのでは、ついつい手を出す仕入れでも、きちんと計算すればブレーキがかけられる…、それが現実かも知れません。
 いくつかの条件で計算をしてみて、利益が出るかどうかを事前に十分チェックするようになった経営者が共通して、無理をしないで利益を出している要因が、ここにあるのです。
 計算された意思決定にこそ“利益”が宿る
1.新規事業に目を向けたC社
 一方、C社は1年後、3年後、5年後の会社収支をシミュレーションしてみることにしました。従来の活動を続けると、先行きどうなるかを知りたかったからです。
 シミュレーションをより現実的にするために、条件作りにはやや苦労しましたが、得られた結果を見て愕然としたと言います。それは、

このままの事業を続けていては、毎年5%売上を伸ばして
利益を出しても、資金繰り上、借入金の返済ができない


という見通しが出たからです。
 売上を毎年5%伸ばし続けるのにも、並大抵以上の努力が必要ですが、それでも借入金を返済できないとしたら、報われない努力に埋没することになります。それは何としても避けなければなりません。

2.迷いを払拭したC社の社長
   シミュレーション結果を見て、C社の社長は『新しいことを始めなければ希望はないし、どうせ努力をするなら希望が見えることに注力すべきだ』と心を決めたそうです。そして現在はインターネットを通じた新規事業を模索し、勉強会や情報交換会、あるいは国の助成制度などを詳しく調べ初めていると言います。
 また本業分野でも徹底見直しを実施し、どうしても必要な施策以外は行わないと割り切れば、大幅にコストダウンができて、かなり大きな“収益構造改善”ができたそうです。

3.厳しい時代には正確な“数値”が頼り!
   考えることも大切ですし、努力も重要です。しかしその考えや努力の方向がはたして正しいかどうか…。その検討のためには、現状が続くと将来はどうなるか、という成り行き計算を行ってみなければ見えてこない課題が少なくないのです。
 むしろまず予測計算をしてみる習慣がないことが利益の出ない最大の理由だったかも知れません。試しに計算してみて、その後に意思決定をする…、そんな習慣の定着こそが、困難な時代に利益を生み出す源泉なのではないでしょうか。
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